余韻に浸る朝
目が覚めたのは8:00 am頃だった。
朝風呂に浸かり、ホテルの無料朝食を食べ、11:00 amのチェックアウトを待つことにした。
チェックアウトを待っている間も、余韻はずっと抜けなかった。
ライブ中に撮った動画を見たり、サインを眺めたり、スマホで自分のツイートの数字が増えていく様子を眺めたりして昨日の出来事を思い返しながら、ベッドやソファーでゴロゴロダラダラしていた。
たぶん、ニヤニヤしすぎて今にも溶けてしまいそうな表情をしていたと思う。
すると、Twitterに驚くべき通知が届いた。
なんと、Andyが自分のツイートを引用RTで反応してくれたのだ。
本人に認知されて反応もいただけるとは、、、Andyファン冥利に尽きすぎる出来事であった。
そのまま特に何をするでもなく余韻に浸るうちに11:00 amになった。
フロントでチェックアウトを済ませ外に出た。
暇潰しカムバック
ホテルから出た瞬間、約12時間もの暇潰しタイムが始まった―
前日譚その4で述べた通り、Andyのライブを見たらもうフローレンスに用はなく、電車(Amtrak)でNYに行くのみである。
tommykawa-guitar-experience.hatenablog.com
(↑前日譚その4)
なるべく早くフローレンスを去ってしまって、見どころ無限のNYに行くように計画すればよかったのだが、非常に情けない理由でこの時間(深夜発)の電車に乗らざるを得なくなったのだ。
というのも、NYの宿のチェックイン日を間違って1日後にして予約してしまったのだった。
(しかも予約変更不可とのことである。)
宿無しの状態で夜を過ごすわけにもいかないが、無駄な出費も抑えたい。
何とかして一晩を安全に過ごさなければ…
そう思い、捻り出した苦肉の策が「NY行きの列車を夜行にして、電車の中で一泊を過ごすこと」だった。
頭が良いのか悪いのか分からない解決策を取ったのと引き換えに発生したのが、12時間の暇潰しタイムなのだ。
まず立ち寄ったのが、フローレンス群博物館(Florence County Museum)である。
フローレンス群とは、サウスカロライナ州をもう一段階細分化した括りで、名前の通りフローレンスを中心に広がるエリアである。
この「群(County)」は、日本で例えれば「県」に近いかもしれない。
そうなると、「州(State)」は関東地方、九州地方みたいな「地方」に近いのかも。
総じていうと、Florence County Museumとは「フローレンス県フローレンス市(県庁所在地)にあるフローレンス県立博物館、みたいなイメージだろうか。
(ちなみに道を挟んだ反対側には、ライブ会場のFMUがある)
入り口には「銃の持ち込み禁止」の注意書きがあり、日本では絶対に感じられないアメリカを感じたのだった。
なお、博物館の展示内容は下記の通りである。
【補足】
Francis Marionは、日本人感覚でいう「ご当地の戦国武将(または幕末志士)」みたいな扱いなのだろう。
新潟県の博物館に行ったら「上杉謙信の特別展」があった、鹿児島県の博物館に行ったら「西郷隆盛の特別展」があった…etcみたいな感覚だと思う。
ちなみにAndyのライブ会場のFMUの正式名称はFrancis Marion Universityで、新潟大学が上杉謙信大学、鹿児島大学が西郷隆盛大学と名付けられているようなものと考えていいのかも。
地元から相当愛されているご当地ヒーローなんだろうなぁ~と思う富川であった。(補足おわり)
結局ここでは1時間半ほど展示を見て時間を潰せた。
(規模がそこまで大きくなく、解説の内容が英語でよく分からない状態にしては頑張ったと思う)
展示を見るのに飽きたため、休憩用のソファーに座りSNSを眺めた。
日本時間では深夜3時前だったのだが、とある友人がツイキャスで深夜の雑談配信をやっていた。
「これは時間潰しにありがたすぎる!」と思い、配信に参加した。
日本語を話している声を聞くだけで、もはや安心を通り超えて感激してしまった。
というのも、SNSのチェックや読書をしていることもあり文字での日本語には触れていたのだが、音声での日本語とは隔絶されていたのだ。
友人のツイキャスが終わると同時に、暇潰しタイム再開のゴングが鳴る。
明らかに暇そうにしている姿に見かねたのか、配信が終わってすぐのタイミングで博物館の方から「お土産にどうぞ」と展示絵のマグネットをプレゼントしてくれた。
ずっと博物館に居座り続けるのも申し訳ない気分になったので、街中を散策した。
散策しながら撮った写真をいくつかピックアップする。
これらの写真から、フローレンスの街の雰囲気が伝われば幸いである。
しかし、知らない場所を歩くことが大好きな自分も、さすがに1時間ほどで完全に飽きてしまった。
本当にすることが無くなり、暗くなるまでは公園のベンチに座って読書をすることにした。
それからAmtrakの待合室に行こう―
しかし、こういうときに限って、時間というものは簡単には過ぎてくれないものだ。
本を見つめながら途方に暮れていると、向こうから“Hey! What’re you doing??” という声がした。
顔を上げると、女性職員さんが手を振っていた。
Southern Hospitality
女性職員さんは自分が深夜発のAmtrakに乗ることを知っており(前日に話をしていた)、「こんな所で時間潰してたの????」と、笑いながら話しかけてくれた。
そのまま話を進めていくうちに、この期に及んでやっと女性職員さんの名前が”Pam”さんだということが分かった。
Pamは「美味しいスムージーあるから飲む?」と、昨日の夕食に引き続きご馳走してくれた。
お礼を言うと、Pamは「全然いいのよ!私はあなたのサウスカロライナのママ(South Carolina Mom)だから!」と言ってくれた。
そして、続けざまに「今からFMUに戻るけど、もし行くあてがなければ閉館まで中にいていいよ!」と言ってくれた。
この辺りのタイミングだっただろうか、「Andyたちもあなた(Pam)も含めて、あまりにも自分に親切すぎてビビってる」みたいなことをPamに言った。
すると、「南部の人たちは昔からね、外から来た人を温かく迎え入れる習慣があるのよ。”Southern Hospitality”って言うんだけどね!」と教えてくれた。
こうして、私・富川は閉館時間までFMUで待機することになった。
FMUでは、Pamが自分のことを混血の男性職員の方(名前を聞いたが思い出せない…)に紹介してくれ、その男性職員さんに館内を案内してもらった。
特に、メインホールは壮観だった。
なんと、クラシックコンサートからロックバンドのライブまで、あらゆるジャンルの演奏に対応可能かつ雰囲気もマッチしている、というとんでもなくカッコよくて広い会場なのだ。
案内中、男性職員さんに「日本ではどんな音楽が流行ってるの?」と聞かれたので、米津玄師のKICK BACKをオススメした。
すぐさまSpotifyを開いては聴いてくれて、「Very cool!!!」と言ってもらった。
おそらく、サウスカロライナ州フローレンスで米津玄師が再生された世界初の瞬間だっただろう。
FMUの案内が終わり、Pamが「家族の夕飯として”Chick Fil A”という(マックでいう)チキンフィレオが美味しいハンバーガー屋をテイクアウトで買いに行くから、Tommyも一緒に来てよ!」とのことで、車に乗せてもらった。
Pamの車は日本車(確かホンダのフリード)で、「そっか、お前もはるばる日本から来たんだな」と勝手に親近感を抱いた。
FMUに戻るや否や、チキンフィレオをいただいた。
ポテトが網状になっているのがとても印象的だった。
閉館時間になり、いよいよPamともお別れだ。
Pamはサウスカロライナのママとして、本当に自分によくしてくれた。
第一、FMUにライブ会場の下見に行ったときにPamがいたのが奇跡の始まりだったのだ。
下見のときにPamと会えていなければ、AndyのMasterclassに案内してもらえたことも、Andyのギターを弾かせてもらえたことも、Andyに自分の演奏動画を見てもらえたことも、アンディーズの温かさに触れたことも、、、全て起きえなかったかもしれない。
FMU近くの豪華なホテルの部屋に入った瞬間、ビックリしたなぁ…
腹ペコだったときにご馳走してくれたメキシコ料理、美味しかったなぁ…
話の途中で“Crazy”って反応してたときの表情、面白かったなぁ…
暇すぎて途方に暮れていたときに声を掛けてくれた瞬間、ホッとしたなぁ…
Pamが自分にしてくれた全ての出来事がフラッシュバックし、様々な感情が沸いて溢れそうになった。
別れのハグをしながら、自然と口から”I miss you”という言葉が出ていた。
思い出すとちょっと恥ずかしいが、感動的な思い出である。
そのままFMUを後にして、Amtrakの待合室に向かった。
待合室では3時間ほど過ごしたはずなのに、あっという間にAmtrakの出発時間になっていた。
添乗員の方に案内されるまま車内に乗り込み、空いている席に腰かけた。
車輪が軋む音を立てて列車が動き出した。
PamやアンディーズのSouthern Hospitalityに触れたフローレンスともお別れである。
寂しいような、嬉しいような、、、今すぐ泣き出したい気持ちになった。
ありがとう、フローレンス。
(NY編に続く)